-海ヲ纏ウ土-
◎場所:京・茶わん坂 東五六
◎日程:2018年4月25日 (水) ~ 5月16日 (水)
田上さんの作品の魅力は国境を超え、これまで多くの人々の心を捉えてきました。
一言で殻と表現しても、ひとつひとつの作品から受け取る印象は実に多様で唯一無二。
「蒼」「滄」「静」「澄」「穏」・・・
その中で私共が今期特に注目したのは「躍動感」です。
どっしりとした白地のボディーに掻き落としという技法で描かれた無数の線。一見モノトーンのような静けさ・穏やかさを感じますが、同時に力強さを兼ね揃えています。
また、釉薬のその澄んだブルーは字の如く濁りやよどみが少しも感ぜられないほど際立って鮮明であり、大海のような広大な世界の中にある生命力を感じます。
「卵の殻、貝殻、種子の殻・・・。成長に伴うあらゆる生命活動に欠かすことのできない存在としての「殻」。そこから出でる瞬間から始まる、新たな生命活動の予感。太古の時代、海中より爆発的に進化を遂げた生命の痕跡。私のつくる作品はそれらを感じて戴ける存在でありたい。」と田上さんは仰います。
それは生物の卵のように生命活動の礎を築くための殻、貝殻や甲殻のように己を守るための殻、抜け殻のように旅立ち、飛翔を意味する殻。
「殻」という言葉は、生命の根源(うちに秘めたエネルギー)から最終的には羽ばたく為の生命力(バイタリティー)へと繋がり、それがつまり「躍動感」と表現できるのではないでしょうか。
普段の制作工程においては、素材の特性を活かし感じるままに変化をつけながら成形される田上さん。イメージは自然と湧いて出てくるのであまり悩んだり、迷ったりしたことはないそう。
今般お作り頂いた作品に関しては、予め完成像をイメージし、すべて計算をしたうえで作陶に移るという初めての試みをされました。
形状、重量、バランス、釉調、イメージ通りの完成となったのでしょうか。
また、その作品を拝見したとき、私たちはどのように感じるのでしょうか。
「立夏」にあたるこの時期の開催に際し、若葉の生き生きとした季節にピッタリの作家、それが田上さんだと考えご縁を頂きました。
山々を見渡せば青々とした新緑の景色の数々。さわやかに風が吹き渡るなかで精力的に活動する生物たち。新たな命の誕生、生命の躍動を感じる、一番バイタリティ溢れる時期。
是非、田上真也さんの躍動感溢れる世界を感じて頂けますと幸甚です。
私共と陶芸作家・田上真也さんとの出会いは約2年半前。
某個展で拝見した作品のダイナミックさ、澄んだ青色のインパクトは記憶に残るものでした。
その後、毎年秋に当社で開催している「わん碗ONE展」-京都の作家の100碗展に出品頂き再会を果たしました。田上さんとの縁はこれがきっかけであり、もしその個展に立ち寄っていなかったら、現在の関係は間違いなくなかったでしょう・・
作品はもちろんのこと、私共はそのひととなりもまた魅力的に感じています。シャイな印象を受けますが、話すと独特の感性や心の中に情熱が渦巻ており、新しいアイディアが生まれると顔が輝きだすのが印象的です。
今回の陶展に際しては、初めて信楽にある陶芸の森の創作研修館を利用され創作されました。
そこで世界中から集まる表現者達と共に活動された田上さん。見据える先は自らのキャリアの成功のみならず、陶芸界の発展、そしてそれを支える市場の在り方にまで及びます。常に世界に目を向け、その中で何ができるのか模索しているお姿は、非常に頼もしいです。
「陶芸といえばうつわ。轆轤を回すことだと思っていた。」と日々轆轤技術の習得に励まれたように、陶芸を始めた頃から大切にされているのは基礎。「型」があるからこそ「型破り」できる、オリジナリティー溢れる作品を生み出せるのだと感じました。それは私共が掲げる「伝統とモダンの調和」にも通じるところがあるとおもいます。
その後、美術大学で共に学ぶ学生たちの、始めから造形的な作品へ入っていく姿にいつしか考え方は変わっていったそうで、気が付けば陶芸作家としての姿に。
そして今や若手作家の中でも群を抜き、国内外から高く評価を受ける存在となられました。
しかしやはり一貫して変わらず先生を突き動かすものは、幼少期より創作活動が好きという純粋な心や情熱なのでしょう。
今、世界が京都に大きな注目を寄せる中、京都の街や私共も新しく進化するべき時を迎えています。
田上さんはその核を成す存在であり、またこれからの陶芸界の在り方を一緒に模索していけるような「パートナー」となれるよう、一緒に切磋琢磨していきたいとおもわせてくださる稀有な存在です。
これからの更なる飛躍に期待したいと思います。